【副作用】うつ病薬で眠くなるのはなぜ?


ねぇねぇ、抗うつ薬の勉強してると「血圧低下」とか「傾眠」って出てくるけど、どうしてそれが起きるの?

オッケイ!
機序を解説するね!
まず,抗うつ薬で血圧低下や不眠が出やすいのは三環系・四環系です。
これらの薬剤で副作用が出る機序は
血圧低下:アドレナリンα1受容体遮断
傾眠:ヒスタミンH1受容体遮断
です。

受容体まで分かれば納得!

じゃあ次は,副作用が起こる理由を構造から考えて理解していこう!
構造って一見難しそうに思えるけど,ちゃんと見れば簡単だから最後まで読んでみてね!
抗うつ剤の原点:クロルプロマジン

なんでいきなりクロルプロマジン?
抗うつ薬と関係ないじゃん。

めっちゃ関係あるよ!
実は抗うつ薬は「クロルプロマジン」をベース開発が進められていて、その過程で偶然で発見されたのが「イミプラミン」なんだ!

え、そうだったの?

そうだよ!
だから抗うつ剤はクロルプロマジンの性質に類似しているものが多い。
実際、クロルプロマジンにも「血圧低下」「傾眠」などの副作用があると言われているよ。
だから抗うつ剤の勉強をする上でクロルプロマジンの性質を理解することはめっちゃ重要なんだ。
クロルプロマジンの副作用については添付文書に記載があります。

クロルプロマジンの基本構造

クロルプロマジンの構造

うわ、出た。
構造式。。。

複雑でだけど1つ1つ分解して教えるから安心して!


フェノチアジン骨格?

そう!
クロルプロマジンはフェノチアジン骨格を含む医薬品なんだ!
まずはこの構造を覚えておこう!
クロルプロマジンと傾眠
クロルプロマジンと抗ヒスタミン薬の関係

そろそろクロルプロマジンがH1受容体を遮断する理由を教えて!

よし!解説しよう!
まずは、クロルプロマジンと抗ヒスタミン薬の関係から見ていこう!


抗ヒスタミン薬?
クロルプロマジンとなんか関係あるの?

抗ヒスタミン薬とクロルプロマジンには密接な関係があるんだ。
ジフェンヒドラミンを含むヒスタミンH1受容体遮断薬には、共通構造が存在する。


ほんとだ。
両方とも同じような構造してる。

H1受容体遮断薬は一部を除いて
- ベンゼン環×2
- アミン
の構造を持っているんだ。
このような共通構造のことをファーマコアというよ!
H1受容体遮断薬はヒスタミンと構造が類似していることもポイントだよ!


確かにヒスタミンとジフェンヒドラミンってなんとなく似てるね!

そうでしょ!
ここで、クロルプロマジンとジフェンヒドラミンの構造を比較してみよう!

クロルプロマジンがH1受容体を遮断する理由

クロルプロマジンとジフェンヒドラミンの構造って似てるよね?

お見事!
クロルプロマジンにはH1受容体遮断薬に共通する
- ベンゼン環×2
- アミン
がある為、眠気に繋がってしまうんだ。

抗うつ薬で眠気が出る理由

抗うつ薬もクロルプロマジンと同じで
- 芳香族化合物×2
- アミン
の構造を持っていれば,
H1受容体遮断作用があるから考え方は同じだよ!

なるほど!

実際に抗うつ薬の構造式を見てみよう!



どのお薬も
- 芳香族化合物×2
- アミン
をすべて持ってるね!

そう!
おまけ:オランザピンにも抗ヒスタミン作用がある

え?
オランザピンにも抗ヒスタミン作用があるの?

そうなんだ!
そもそも,オランザピンを含むMARTA(多元受容体作用抗精神病薬)には眠気の副作用があるんだけど知ってる?

うん!
よく教科書にも書いてあるよね!

更に眠気が出る理由は抗うつ薬と同様,
- 芳香族化合物×2
- アミン
を持つから,H1受容体遮断作用があるよ!
構造式をチェックしてみて!


すごい,抗うつ薬と構造そっくり。
<参考>抗うつ薬の構造式

クロルプロマジンには抗コリン作用もある


え?
クロルプロマジンに抗コリン作用があるの?

意外に感じるけど,でも抗ヒスタミン薬って抗コリン作用もあるでしょ?
抗ヒスタミン作用があれば抗コリン作用もあるって覚えておけばオッケー!
抗うつ剤にも抗コリン作用がある理由

ってことは,抗うつ薬にも抗コリン作用があるの?

さすが!!
抗うつ薬には抗ヒスタミン作用があるから抗コリン作用もあるよ!
クロルプロマジンと血圧低下


クロルプロマジンにはα1遮断作用もあるんだ…
めっちゃ阻害するじゃん。

クロルプロマジンすごいよねー。
じゃあ、なんでα1受容体を遮断するか構造で見てみよう!


ちょっと分かりずらいけどクロルプロマジンの部分構造がノルアドレナリンと似てるから、
クロルプロマジンにはα1受容体遮断作用があるんだよ!

クロルプロマジンとノルアドレナリンの関係は意外だね!
フェノチアジン骨格があるとα1受容体を遮断するって解釈でいいの?

基本その理解でオッケイ!
フェノチアジン系抗精神薬 | 商品名 |
クロルプロマジン | コントミン |
レボメプロマジン | ヒルナミン |
フルフェナジン | フルデカシン筋注 |
プロクロルペラジン | ノバミン |
全てアドレナリンと併用禁忌です!
抗うつ薬と血圧低下

フェノチアジン骨格を持っていない抗うつ薬でもα1遮断作用があるので、構造で解説していくね!


さっきの抗うつ薬だ!
クロルプロマジンと同じでノルアドレナリンに似てる部分があるっていうこと?

そうだよ!
構造式で確認してみて!

MARTAにもα1遮断作用がある

MARTAにアドレナリン遮断作用があるのは聞いたことある!
これも構造が関わってるの?

その通り!
さっきの抗うつ薬と同じでMARTAもノルアドレナリンと部分的に構造が似ていることがポイントだよ!


ほんとだね!
ってかMARTAの構造って抗うつ薬とめっちゃ似てない?

良いところに気付いたね!
だからMARTA、抗うつ薬、そして最初のクロルプロマジンは同じ受容体に作用するんだよ!
まとめ
芳香族×2とアミン⇒ヒスタミンH1受容体遮断

もう一度、抗ヒスタミン薬の構造を見て復習しよう!

抗ヒスタミン作用あり⇒抗コリン作用もある

抗ヒスタミン薬の例を考えれば分かるけど、抗ヒスタミン作用がある医薬品は同時に抗コリン作用もあるから覚えておこう!
ノルアドレナリンに構造が類似⇒アドレナリンα1受容体遮断



「副作用」や「薬効」がなんで起こるのかを構造で考えることもできるから今後に参考にしてね!