【薬剤師国家試験】105回問302,303の解説

68歳男性。肝細胞がんによる肝部分切除後に痛みが出現したため疼痛治療を開始した。1ヶ月前から医療用麻薬が導入され、2週間前に増量された。
今回、肝細胞がん再発の治療のため入院となった。緩和ケアチームの薬剤師は、患者へのインタビューにより、「痛みのコントロールは良好だが、2週間ほど前から眠気が強くなり昼間でも傾眠傾向あり」との情報を得た。

問302
薬剤師は患者の眠気の原因を考察した結果、モルヒネ硫酸塩水和物から他の鎮痛薬への変更の必要性を医師に相談することにした。薬剤師が推奨すべき薬物として、適切なのはどれか。2つ選べ。
1 フェンタニルクエン酸塩
2 プレガバリン
3 オキシコドン塩酸塩水和物
4 ペンタゾシン
5 トラマドール塩酸塩
- 解答・解説
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答えは「1と3」。
モルヒネから切り替える場合は、同じ強オピオイドを選択するので
- オピオイドと無関係なプレガバリン
- 麻薬拮抗薬のペンタゾシン
- 弱オピオイドのトラマドール
は、不可。
よって、フェンタニルとオキシコドンが正しい。
モルヒネによる眠気の対処については、ガイドラインに記載があります。
問303
この患者の病態と薬物治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
1 他の鎮痛薬へ変更しても、便秘は軽減できない。
2 排泄障害により、モルヒネの血中濃度が上昇し傾眠傾向となっている。
3 モルヒネの代謝物が、オピオイド受容体に対する作用増強の原因となっている。
4 鎮痛薬の変更と同時にナロキソンを投与して傾眠を改善させる。
5 腎機能の悪化が、眠気を引き起こすことになった要因として考えられる。
- 解答・解説
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答えは「3と5」。
検査値より、腎機能が悪化していると考えられるので、モルヒネ及びその代謝物の排泄が遅延している。
そして、モルヒネのグルクロン酸抱合体は腎臓から排泄される。
2
⇒一見正しそうだが、実際はモルヒネ-6-グルクロニドの排泄遅延により眠気が出ている。モルヒネ-6-グルクロニドはモルヒネに比べて3~10倍の鎮痛・鎮静作用を持つので、眠気はモルヒネ-6-グルクロニドに依存していると考えられるため。
3
⇒モルヒネ-6-グルクロニドのことなので正しい。関連問題:105回-問132